
絆創膏かぶれをヘルペスと診断された入院記録
(02/07/15) 豊田ひろし(記録作家)
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| 私の家の近くに「新山の手病院」という小さな総合病院がある。前立腺がんの治療に使われているリュープリンの注射跡の一つが,まだしこりのように硬結したところがあり,押すと痛みがあるので切開してもらうため,07/15にこの病院に出かけた。そこで,外科の長田先生(院長)に見てもらった。 硬結した位置を説明したところ,そのことには,全く耳を貸さず,その周囲の疱疹についての質問になった。 「これは,リュープリン注射跡の腫れを治療するために四角のガーゼを貼り,それを覆うように大きな絆創膏を貼った後のかぶれで多摩老人医療センターの泌尿器科で絆創膏かぶれと診断されているのですが。(実際,多摩老人医療センターでは,06/18,06/20,07/04と3回にわたり,その都度,また絆創膏跡がかぶれましたねといわれ,07/04にはカブレスという名の絆創膏を使うように指示されていた。)(かぶれの位置を示す写真)」 と説明すると, 「これは,かぶれなんかではない。ヘルペスだ。すぐに,入院して直したほうがよい。ウィールスなのでほかにもうつるよ。」 と自信たっぷりに説明してくれた。 硬結したリュープリン注射跡のことについてはまったく関心がないらしく,何の説明もなかった。入院させることが当面の目的らしい。そのあとで,リュープリン注射跡のこともゆっくり診察しようということだったのかもしれない。 ウィールスと聞いてびっくりしたので,いったん家に帰り,午後3時に入院することにした。 家に帰り,家庭医学大事典(小学館)のヘルペスの項目を読んで見た。 ヘルペスの特徴 *水痘・帯状疱疹ウィルスが感染して起こる病気である。 *三叉神経,肋間神経,坐骨神経の支配領域に感染することが多い。 *神経の支配領域に沿って右側か左側のどちらか一方に直径2〜4mmの丘疹や水泡が帯状に密集して起こる。 *鈍い痛み,焼け付くような痛みを伴うのが特徴。 *発疹は特に治療しなくても3〜4週間で自然治癒する。 *抗生物質軟膏を塗っておくだけで,自然に乾いてかさぶたになり,7〜10日で自然治癒する。 直径2〜4mmの丘疹や水泡が帯状に密集して起こるという点は私の症状と一致するが,これは,絆創膏の皮膚に当たる部分が帯状になっていたから帯状にかぶれるのは当たり前ではないか。かぶれの部分は最初からかゆみとか痛みとかは全くなかったので,ヘルペスの症状とは違っている。入院後のナースステーションでの病状記録および,病室の担当医にはその旨を報告した。 また,かぶれは,06/20頃から始まったことも報告した。たとえ,ヘルペスだったとしても,自然治癒に3〜4週間ということなので,もう,かさぶたの状態であるから,自然治癒の段階に入っているはずであろう。しかも,07/04から朝晩2回ずつゲンタシンという軟膏をつけてから,10日以上になっている。ヘルペスなら治っているはずである。 病室は6人部屋であったが,患者は3人しかおらず,病院の経営も大変だなあと感じながら,今後の診察についても少し不安になった。 入院後は,採血,検尿,心電図,レントゲン写真などと忙しかった。そのあとは, 何の説明もなしに,看護婦が点滴をしにきた。今日は就寝時間後にも,もう一度点滴をするといわれた。何の点滴かサッパリわからなかったので, 「名前は何といい,何のための点滴ですか。」 と聞くと, 「ゾビラックスです。ヘルペスの治療薬です。」 とのことであった。早速,手帳に記入した。 ゾビラックスと帯状疱疹のホームページ 食事は一食\780であったが,材料費はせいぜい\250程度のもので,コンビニの\450〜\500ぐらいの弁当とちょぼちょぼと思ってよい。 夕食後,看護婦さんから次のような連絡があった。 「皮膚科の専門医が明日火曜日かその後の金曜日にしか病院にみえないので,多分,金曜日になると思いますが,それまで,毎日,ゾビラックスの点滴を3回ずつ続けます。」 皮膚科の先生が来る日に診察してもらうまで,つまり,ヘルペスかどうか確定するまでの間,ヘルペスの注射を続けるというのだ。ホームページをごらんの皆さんは,この説明に,何か疑問をもたれないだろうか。 そう,本末転倒です。例えば,国立や公立の病院では,専門医がいろいろと調べて,少なくとも病名が確定するまでは,治療を始めません。 病名が確定しないうちに,その病名を仮定して治療したとすれば,もし誤診で事故でも起きれば病院自身の命取りになる。私的な病院だからといってこの本末転倒が許されるはずはない。 もし,金曜日の皮膚科の医師が,ヘルペスは誤診で,ただの絆創膏かぶれですと診断したら,それまでのヘルペスの治療はいったい誰のための治療になるのだろうか。単に病院の経営の利益になるだけである。したがって,皮膚科の医師は,たとえヘルペスでなくてもヘルペスだと診断するかもしれない。ばれなければ,何をしてもよいという時代はすでに終わっている。もし,そのようなことがあれば,最近の東京女子医大のカルテの改ざん事件よりも大変な事件になるだろう。今まで世話になっていた病院だから,このようなことは避けたい。そのためには,病院を替えて専門の皮膚科のいる多摩老人医療センターに診察してもらったほうがよいだろうと考えた。 そこで,早速,家に電話して多摩老人医療センターの皮膚科の診察日を調べてもらった。月,火,金が皮膚科主任の武村先生の担当であることがわかった。直ちに,新山の手病院のナースセンターに行って, 「明日の火曜日に当院で診察できないのならば,明日の火曜日に多摩老人医療センター皮膚科で診察してもらうことにしたい。」 と連絡した。 10分もたたずに,当直医がやってきて,金曜日まで当院皮膚科の診察を延ばす理由を説明してくれた。 「金曜日の先生はヘルペスの専門家なのでその先生に見てもらったほうが診断が確実です。しかし,早く,結果を知るために,明日退院して,多摩老人医療センターの皮膚科で診察してもらってかまいません。もし,ヘルペスならばそちらの病院に入院されたほうがよいと思います。」 という,親切な返事をもらった。 翌日の朝,9:00前に退院して多摩老人医療センターの皮膚科に連絡したところ,10:00頃に来てよいということで,早速,タクシーで皮膚科に向かった。 武村先生の診察は大変綿密で,下腹部近くまで診察して, 「ヘルペスはこんなに幅が広くならないし,かぶれの位置が絆創膏の形になっているので,絆創膏かぶれです。ヘルペスではありません。新山の手病院で出されたヘルペス用の軟膏は使わないでください。これから処方するサトウザルベという軟膏を使用し,一日2回ぐらい薄く塗り,ガーゼや絆創膏は使用しないようにしなさい。」 と指示された。また,患部をこすったりしないようにすれば,風呂に入ってもよいといわれた。この結果は,帰宅後,新山の手病院のナースステーションに連絡した。 病院の患者に対する応対は,病院の利益を優先させるのではなく,患者の利益を優先させるべきである。私の場合は,患者本人の説明をまず医師が謙虚に聞くべきであった。どのようにしてかぶれが広がったかを説明しても,真っ向から否定するような診断は避けるべきである。とくに,専門以外の病気の診断は誤診のほうが多いともいわれている。金曜日に当院の皮膚科の専門医が来るのならば,そのときまで待つか,他の皮膚科で見てもらうかを医師が患者に聞くべきであった。入院させるとすれば,皮膚科にみてもらった後で良かったのである。 もし仮にヘルペスであったにしても,発疹があらわれてから,3〜4週間を経ているのだから,自然治癒の時期である。ヘルペスと断定できない患者に対して(入院当日夜の看護婦の証言では,まだ,ヘルペスと断定されていませんが,あせらず点滴を続けながら金曜まで待ってほしいいわれた。),ヘルペスの初期の患者に行うような点滴の洪水治療(一日3回少なくとも4日以上)は,無知の患者を利用した合法的な常用の営業手段だったのだろうか。 金曜日以降いつまで続くかわからない一日3回の「新山の手病院」における無意味な点滴攻めから解放されてほっとした。これからは,病院の指示に患者が無条件に従う時代ではない。病気についての少しの予備知識があれば疑問を持つことができる。少しでも疑問があればどんどん質問したほうがよい。判らないことをはっきり判りませんと回答できる医師はよい医師である。患者の報告をあまり聞かずに断定的な診断をする医師は要注意である。その回答に疑問があれば,すぐに病院を替えたほうがよい。 一般的な話になるが,現在は患者が病院を選ぶ時代である。病院の価値も存亡も,これからは患者が決めるといえるだろう。大企業も銀行も,ありの一穴から滅び行く時代である。病院とて例外ではない。まず,第一に患者の利益を考えてくれる病院を患者自身が選択して育てていくことが大切である。 この誤診入院による一日の費用は,保険合計\82740,本人負担は\8270(負担金1割),その他食事2食分で\1560であった。(参考:領収書←クリック)もし,金曜日まで点滴を受けながら誤診入院を続けた場合,その費用はさらに患者の負担増となる。ちなみに,退院日の午前中に診察してもらった多摩老人医療センターでの支払いは\110であった。 誤診入院であったとしても,患者から合法的に支払いを請求できる医療システムの現状に対しては,ただ運が悪いとあきらめるだけなのだろうか。 この記録は,診察の誤診をせめるものでは全くありません。ちょっとした誤診はどの医者にもあります。専門分野でない病気で判断が分かれる場合には,誤診するのも仕方ありません。実際,外科の長田先生も,当直医も,私のかぶれを見てヘルペスだと仮診断しています。それまでの治療経過に基づいて,ヘルペスとは違うのではないかと疑っていたのは本人だけでした。 このエッセイの目的は,病名が確定しないことを医師や看護婦が知りながら,つまり,誤診かそうでないかを確認する前に,仮定の診断をもとに何の疑問も持たずにどんどん治療を進めていく医療体制に対する不信を述べたものです。 付記 新山の手病院でなされている生活習慣病指導管理料の扱いについて,説明しておこう。この内容は,新制度の内容がずさんなだけでなく,病院における扱いについても疑問を抱きたくなるような事柄が多すぎる。興味をお持ちの方は,次のホームページをご覧ください。 新山の手病院における生活習慣病指導管理料の扱い |