大腸がんの検査に引っ掛かる

                                                     04/01/31 豊田ひろし

大腸がん便潜血反応検査
 2003年の10月半ばから気が付いた排便のときの出血は,重粒子線照射の遅発性後遺症として直腸内側のただれが原因であることが10月24日の肛門科の診断で明らかになった。しかし,肛門科で処置された強力ステロイド系の座薬のため,直腸内のただれがさらに悪化し,肛門付近の大きな切れ痔を発生させるなどの副作用を起こしたため,座薬を非ステロイド系のものに変えることによって数日で切れ痔はほとんど直すことができた(共済立川病院肛門科での診察体験記録を参照)。排便のときの出血も目立つものがなく,直腸内のただれも治ったようであった。
 しかし,まだ,直腸からの出血が完全には直っていないことが,翌年の一月の大腸がん便潜血反応検査(日本労働文化協会恵比寿検診センター)で明らかになった。ここでの検便方法は,透明なプラスチック筒の上蓋に取り付けた棒の先の部分にわずかの便をこすりつけたものを2筒用意するだけである(MPA法)。
MPA法
 便の中に血液が混ざっているかどうかを調べる検査で,たとえば大腸がん、大腸ポリープ、クローン病、潰瘍性大腸炎、痔疾などがあり出血している病変があれば陽性となります。
この便潜血検査は大腸がんの中の進行がんで約70%、早期がんで約35%の方が陽性となります。
簡単で苦痛が無く受診者の負担が少ないためスクリーニング検査として行われています。
大腸がん検査のためのX線撮影
 その検便の結果,04/01/08の検査で,血液反応が認められた。検診センターからの検査報告書に,「消化器科・胃腸科で精密検査を受けてください」と書いてあったので,近所の多摩老人医療センターの消化器科で見てもらうことにした。早いほうがよいと考えて,04/01/19に永井俊彦医師の診察を受けた。その日は簡単なX線撮影をしたが,01/30にさらに精密なレントゲン撮影をしますと言われた。
 検査の注意としては,次のような指示があった
検査前日 牛乳,ヨーグルトなどの乳製品は摂取しないこと。
 昼食 軽い食事(すうどん,実のない汁など)
 午後5時から6じ頃 夕食は実のない汁,葛湯,三分粥。コップ一杯以上の湯または水を飲む。
 午後7:30頃 コップ一杯以上の水(または湯,実のないジュース)を飲む。
 午後9時頃 検査用下剤(2種類)を飲む。
    下剤名 マグコロール液(0.5本,腹痛,吐き気が起こることがある。),
          ラキソベロン液(0.5本,)

 午後四時以降 飲食禁止。
検査当日
 午前6時 坐薬(レシカルボン坐剤)を一個肛門に挿入
 排便は水状のものが数回出るのが普通だが,便が硬いときは,病院で浣腸をする
 検査前日は,夜中に軽い吐き気を生じたが,ぐっすり眠ることができた。
 翌日,検査室に着き,目の前においてあった大腸検査の説明書を見て驚いた。それまでは,単にX線撮影をするだけかと思っていたが,バリウムを肛門から挿入し,そのあと,空気を送り込むことと,検査中は送り込んだ空気を出さないためオナラをしないことなどが書いてあった。このことは,実は,永井医師からは何の説明もなかったのである。人によっては,この検査は非常に苦しいものだと聞いたことがあったので,予想外に不安な感じがしたが,自分の健康のためとあきらめて検査を受けた。
 頚椎の後縦靭帯骨化症のために.,寝台を回転させるときに寝台の支えを握って身体を支える握力がないため,横になったままで撮影してもらうことにした。後ろに大きな穴の開いた青色の特大パンツをはき,上半身は下着のシャツの上に更衣をまとった。大量のバリウムをまず肛門から挿入した。このあと,さらに,手押しの空気入れで大腸内に空気を送り込んだ。おなかがパンパンにはってきた。苦しくならないうちに空気を送るのを停止した。手際よい操作であった。
 身体を仰向けにしたり,うつ伏せにしたり,右を向いたり左を向いたりを繰り返しながら約30分ほどのX線撮影が続いた。操作中の痛みや苦しみはほとんどなかった。
 横になって撮影を受けたせいか,幸いなことに,排便,排尿の我慢をしないですんだ。検査が終わると,検査室内にあるトイレにバリウムを排泄するために直行した。しかし,大腸の奥までバリウムが入り込んでいたのであろうか,直腸付近の液状バリウムがいくらか排泄されただけで,あまり,大量のバリウムは出てこなかった。
大腸のX線検査終了後の注意
 このあと,バリウムを排泄しやすいようにと20cc程度の液体の下剤をくれたので,それを飲んで検査室を出た。
 しかし,この後の注意が,さらに必要である。病院の仕事はそれまでで終わったとしても,バリウムを無事に排泄することが患者の責任にまかされているからである。
 終了後はなるべく早く帰宅し,トイレの近くにいる必要がある。液状バリウムが腸内を下がってきて便意を感じると,排便を我慢するのがほとんど不可能に近い。
健康な人でも病院から帰宅するまでに1時間前後かかる人や,腸の働きが活発な人は,トイレに近い場所にいるか,万一の用意に失禁パンツをはいておいた方がよい
 私の場合,病院からの帰宅途中一時間足らずで,バリウムが一握りほど漏れ出した。しかし,当日は失禁パンツをはいていたので,ズボンまで汚さずにすんだ。すぐに近くのトイレに入り,用意していた別のパンツにはきかえた。
 帰宅後,就寝前に4回,就寝後は3回トイレに行くことになった。何回も,排便をしたためか,直腸が傷つき,最後には,バリウムや便はほとんど出てこなかったが,直腸からの潜血で便器内の透明水が赤くなり,血糊が便器内の透明な水中に浮いているのに気づいた。おそらく就寝中に直腸内壁から出血したものが凝固したものと思われる。
大腸の注腸造影X線検査後の診察と内視鏡検査の説明 
 X線検査から4日後の2月3日(2004)に検査の結果の説明と今後の内視鏡検査についての説明を受けた。
 「先日の検査では,バリウムを飲んで大腸に空気を入れることを知らずにいて驚きました。」というと,
 「初診の患者には説明しているはずですが,説明しませんでしたか。」
ということなので,普通は,説明していることがわかった。なにしろ,先日の診察はすでに,午後5:00を過ぎてからなので,永井医師も疲れており,必要最小限の説明しかできなかったものと思われる。
 このとき,造影写真について説明してくれた。
 「この(X線)写真で,上行結腸に小さなポリープ様の所見が見られるので,内視鏡検査で調べる必要があります。」
 「ポリープ様のものはポリープでないこともありますか。」
 「小さな宿便のときもありますが,内視鏡でないとはっきり分かりません。」
 「内視鏡検査には,承諾書は必要ありませんか。」
 「うちの病院では承諾書なしで検査していますが,必要ならば書いてもらいます。」
 直腸のただれによる出血を確認するために診察に来たはずだったのが,いつのまにか,大腸の内視鏡検査にまで発展しようとは全く予想もしなかったことである。重粒子線照射を受けて,後遺症として直腸内のただれが生じて出血した患者はおそらく何人もいることと思われるが,内視鏡による大腸検査にまでかかわった人はいるのだろうか。
 「それでは,大腸検査はしなくて結構ですので,直腸だけ検査して下さい。」
 「承知しました。」
 「直腸検査だけなのに,なぜ大腸内の洗浄と空気の送り込みが必要なのですか。」
 「直腸を広げるためには大腸に空気を入れて大腸まで広げないと内視鏡が入らないからです。かなり,きつい検査になります。」
 早速,承諾書が下欄に続いている説明書を書いてくれた。そのとき,承諾書に署名,捺印をすませた。永井医師の診察の印象は几帳面で親切であった。
 受付を済ませて後,検査前日と検査当日の準備についての説明,薬の溶かし方・飲み方を受付横の担当薬剤師からうけた。
 その際に,2〜3時間の間に2.0リットルのニフレックを飲むようにいわれた。
 「前立腺がんを治療した影響で膀胱の容量が小さく,100cc程度を超えると自然排尿を起こすので,短時間で飲むのは困るのですが。」
 細かい内容をどのように説明したらよいか分からない状態である。2.0リットルの水分は,私の場合,約20回分の排尿回数になる。そのほかに,この薬を飲むことによって排便を何回か促し,腸内を洗浄するらしい。私の場合は,トイレの回数が心配だったので,薬剤師にその事を話したのだが,早速永井医師と連絡をとり,
 「初めは,ニフレックは数時間胃や小腸内にたまっているので心配はありません。」
との返事をもらった。
 「病院にきてから飲みだしてもかまいません。」
と薬剤師は親切に答えてくれた。
 私の場合,普通の水を一合(180cc)程度飲んでも5〜10分経つとすぐに排尿がはじまる。
 ニフレックを飲んでいる最中に何回もトイレに行くことはかまわないが,検査中にも自然排尿が起こることは間違いない。重粒子線照射の遅発性後遺症のため,排尿の我慢は現在の私には不可能である。
 薬の作用や副作用については検査前の説明書の「注意欄」を見るまでは何の説明もなかったので,インターネットでさらに調べたところ,普通は,安全であるが,まれに腸閉塞を疑う患者,腸管狭窄、高度な便秘、腸管憩室のある患者には注意が必要であることがわかった。とくに,内視鏡検査で大切なことは,内視鏡の扱いに熟知している医者が絶対条件で,少なくなくても一万回程度の内視鏡検査を試みている医者が望ましいことなどがわかった。
 その日は,はたして,内視鏡検査を受けるべきかどうかをインターネットの大腸検査の項目を調べながら過ごした。
 その結果,いくつかの疑問が発生した。
1.肛門科と消化器科の検査の違い
 肛門科で直腸内のただれを診察当日に裸眼視により発見できたのに,なぜ,消化器科では同じ方法がとれないのか。

 消化器科と肛門科との専門職どうしの診察方法の交換がなく,肛門科では裸眼視で発見できるものが,大腸の検査をせずに,直腸だけの検査だけにもかかわらず,消化器科では内視鏡で撮影して判断する方法しか知らないということになる。
 例えば,内視鏡が入る径をもつ試験管のような透明筒を肛門内に挿入すれば,直腸内の撮影も内視鏡で可能なはずである。
2.内視鏡の出し入れによる直腸の損傷はないか
 便潜血反応の原因である直腸内のただれの状態を診察してもらいにきたのに,直径13mmもの内視鏡を直腸に出し入れして,直腸をさらに,傷つけてしまうのではないか。

 現在,排便時の出血が肉眼では分からないほどになっており,ただれの状態も全く異常を感じていない。
3.空気挿入による直腸の損傷はないか。
 内視鏡カメラで直腸内壁を撮影するために,空気を挿入して,直腸を広げなければならない。そのために,まだ完全には直っていない現在の直腸内壁が損傷し,さらに,ただれを引き起こすことはないだろうか。
 
私の場合,直腸が極端に狭くなっており,便秘薬を飲まなくては排便は不可能である。直腸を無理に広げた場合に直腸内壁の粘膜に亀裂が入る可能性もある。やや硬い排便の時には,息張ると出血を伴う。
 空気を入れて直腸を無理に広げ,直腸内のただれを助長することがもしあれば,今までの手当てでほとんど治ってきた成果が何にもならない。
 検査による痛みと多少の直腸内の損傷を犠牲にして,内視鏡検査をしたとしても,直腸がんのようなものはありませんでした,よかったですね。というのが,この検査のもたらす最善の成果であろう。
 がんの可能性の有無を調べる大腸検査のために,かなりの苦痛を我慢するするのなら内視鏡検査は意味があるが,直腸だけを検査するのに,大腸検査と全く同じプロセスをとるのは,それだけの価値があるかどうか疑問に思えてきた。
 内視鏡検査は,ベテランの医者の場合は,全く痛みがないという
(http://daichou.com/cf.htm)。
 しかし,多摩老人医療センターの場合は,「かなりきつい」らしい。相当な苦痛は覚悟したほうがよいということである。

 いろいろと考えてみて,直腸だけの検査は,なんとなく無意味な検査ではないかという気がしてきた。翌日,ちょうど,同病院の泌尿器科による血液検査があったので,そのついでに,内視鏡検査をキャンセルした。
 私の場合,造影写真にみられた上行結腸にあるポリープ様のものが,ポリープである可能性も否定できない。大腸内のポリープは60代の人の二人に一人は発見されるという意見もある。ポリープにはがんの元になるものとがんにならないものとがある(大腸ポリープへのリンク)。
 今回は,直腸の様子を知るための診察であったのだが,直腸の診察は全くしない結果となってしまった。現在は,排便時に肉眼で見える出血はないので,しばらく,そのまま様子を見ることにした。