5. 重粒子医科学センター病院での治療準備
| H13/12/07に重粒子医科学センター病院に行き,重粒子線による次の治療予定が決った。 H14/01/04(金)14:00 固定具の型どりをする。固定具(マット)というのは,正確に腫瘍に放射線を当てるために,毎回,同じ体の姿勢を保つために,照射用のベッド(カプセル)の上において,その上に人体を載せて身体の下部や側面を固定する道具のことである。患者ごとに特注する。この他に固定用カバー(シェル)も作成され,頭部または腹部の表面をプラスティック製の型で固定する。 H14/01/07(月)9:45 完成した固定具を使用し,治療計画用のX線CT撮影をする。これは,CT画像に重粒子線を照射する部位や周辺の臓器の輪郭を入れ,どの方向からどれくらいの線量を照射するかを決めるためのもので,それをもとに,多くのスタッフにより治療方法が検討される。 インフォームドコンセント(説明に対する同意)をする。ここでは,病気の状態,放射線治療の必要性,効果,副作用の説明がなされ,家族と一緒に説明を聞き,同意書に記名,捺印をする。 H14/01/15 入院。 H14/01/16 実際の重粒子線照射のリハーサル。 H14/01/18 治療開始。 固定具の作成 1/4に固定具を作成した。エックス線による放射線治療をする病院では,固定具を作成しない病院も多いという。当病院ではエックス線治療でも必ず固定具を作成する。まず,裸になり,パンツを特性のブリーフ(網状)にはきかえ,上半身はシャツ1枚で,固定具作成用の台の上に仰向けに横たわる。このブリーフは今後の重粒子線治療のときも使用するものである。 固定具は全部で3個である。肩から上の後頭部を支える固定具と両足のかかとを支える固定具の2個は同じ材料でつくられる。どちらも粒状の発泡スチロールの入った布袋に接着剤の粉が入っているもので,その上に後頭部(または,かかと)を載せて頭(または,かかと)の形が決まった位置で霧吹きのようなもので接着剤(水硬化型ウレタン)に水分を吸収させると,接着剤が溶けて乾燥するとともに粒状発砲スチロールが互いに接着し10分程度で固定した型ができあがる。 同時に,固定用カバー(シェル)も作成される。温度45℃以上で完全に軟らかくなる正方形の熱可塑性プラスチックシートを,4人がそれぞれ四隅を持ちながら患者のおなかの上にかぶせる。温度が45〜50℃程度に下がるのを待って,そばから,うちわで扇いで風を送りプラスチックの温度をさげる。ふにゃふにゃした軟らかいプラスチックは,温度が45℃以下になると正確に患者の体型に沿って変形して固まっていく。近代的な設備の中で,うちわで風を送るというのがなんとなく日本的な発想で面白い。こうして,3個めの固定具がつくられた。 固定具の作成は予約時刻の20分ほど前から始めてくれた。一人の患者の固定具を4人がかりで作ってくれたおかげで,所要時間はなんと30分以内であった。 治療計画用のX線CT撮影 CTの撮影の前に浣腸をして直腸をきれいにする。そのあと,尿道から管を入れて導尿したあと100ccの食塩水をいれて膀胱の大きさを一定に保つ。この方法は,後に身体の前方から照射ときのリハーサルである。一定量の食塩水をいれるのは,膀胱に及ぼす副作用を少なくするためと,膀胱の上方から重粒子線を放射したときに,毎回一定の線量が膀胱下部にある前立腺の癌組織に吸収されるようにするためという。CTの撮影は30分以内であった。 管の挿入は多少違和感があり,尿道にある程度の痛みを与えるが,我慢できないというほどではない。しかし,その直後の排尿のときにやや痛みを覚えたり、失禁しそうな感覚が生じたりした。 インフォームドコンセント 「患者さんへの説明文書」という説明書(10数枚)と同意書が渡され,担当医の森田先生からその内容の要点が説明された。説明書の内容は次のようである。 1.あなたの病状と治療法について 2.臨床試験について 3.重粒子線治療について 4.臨床試験計画書(プロトコール)について 5.あなたに対する重粒子線治療の方法と線量 6.予想される効果と副作用 7.臨床試験後の診察,治療 8.診療録・臨床試験記録の点検・公表と,個人情報(プライバシー)の保護 9.重粒子線治療に係わる費用および健康障害に対する処置について 10.同意およびその撤回について 11.臨床試験の中止と参加辞退について 12.重要情報の継続的提供について 13.あなたに守っていただきたいこと 14.その他 説明書の内容は,極めて丁寧であり,現代医学での治療法の成果と限界・副作用をはっきり述べた上で,臨床試験に参加するかどうかを求める形式になっている。同意した後でも,理由のいかんによらず,いつでも,同意を撤回してよいことが示されている。 普通の病院のX線による放射線治療では,これほどの細かい説明がされることはないであろう。大勢の患者を一人数分ずつで片付けなければとても診察しきれない多くの病院の現状では,恐らくまねできない診療態勢と考えてよい。
重粒子線の照射日程 前立腺の治療に要する重粒子線の照射回数は一週間に4回で5週間続け計20回,総線量は66.0GyE(グレイ等価線量:重粒子線の照射量をX線に換算して表した単位)である。毎回一方向からのみの照射で,前方より,左方より,右方よりの3方向からの照射3日間を3回繰り返し,残り11回の最初に前方照射(4回目)をする。後の残り10回は直腸に当たる線量をいくらか減らして,左右交代に5回ずつそれぞれの側方から照射することになる。 X線による治療の場合は,1日一回2Gy(グレイ)で30回,総線量は60Gyが標準なので,ほぼ一割り増しの線量が当たると考えてよい。重粒子線の実際の線量は毎回1.1Gy程度であるが,生物の吸収線量の効率がよいので,エックス線に換算するとその3倍の3.3Gyに相当するというのが3.3GyEという意味である。したがって,実際の身体に当たる総線量は1.1×20=22Gyであるから,エックス線の約三分の一の照射量ですむという事になる。しかも,エックス線は患部の後方にもダメージを与えるのに対して,重粒子線はほとんどダメージを与えないというのだから,前立腺患者は20回の照射終了後の翌日には全員が無事に帰宅できるというのも納得できるような気がする。 インフォームドコンセントで知らされた病状について,新しいことが分かった。それは,前立腺の生検プレパラートの顕微鏡による分析結果が,重粒子線医科学センターに来る前は5本の生検結果すべてが高分化がんとされていたのが,そうではなくて,中分化がんの中に低分化のがんが混ざっているものと判明したことである。同じプレパラートの分析が試験所によって違うということは驚きであった。また,がんの組織像についての診断にグリーソン値というのがあって,その値は(3+4)7であった。この結果は高リスクのがん(そのままでは将来浸潤や転移の確立が高いがん)であるという。担当の先生に教わった内容の要点を次に示しておこう。
重粒子線の照射日は一週間のうち火,水,木,金の四日間で土,日,月の三日間は休息日になる。休息日の間は自宅に外泊することも自由である。休息日があることによって次の治療までに体力を回復し免疫力を強化する事ができる。 |
1.前立腺がんの発見までの経過・男性性器の説明図へ
2.前立腺がんのステージの告知・骨シンチグラフィやCTの写真へ
3.都多摩老人医療センターでの治療の始まり.
4.重粒子医科学センター病院での治療とは?
6.重粒子線治療の体験報告
7.重粒子線治療終了後の経過
8. 重粒子線照射後約2年以降の経過(2004/02〜)